人事担当者の皆さま、年末調整の準備は進んでいますか?
年末調整は、従業員の皆さんが正確な税金を納めるために欠かせない業務です。しかし、毎年少しずつ改正があり、「去年と同じで大丈夫かな?」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
今回は、年末調整の担当者が特に押さえておくべきポイントと、近年の主な変更点について分かりやすく解説します。
年末調整の基本を押さえよう
年末調整は、毎月の給与から天引きした所得税の合計額と、年間の所得税の総額を比較し、差額を精算する手続きです。これにより、従業員は確定申告をする必要がなくなります。担当者は、以下の書類を従業員から回収し、計算を行います。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の配偶者控除等申告書
2025 年改正点
①基礎控除の引き上げ
基礎控除については、従来は一律 48 万円となっていましたが、合計所得金額に応じて 58万円〜95 万円の範囲で控除されることになります。これは、2025 年・2026 年の暫定的措置となっており、2027 年以降は一律 58 万円の控除になります。ただし、合計所得金額 2,350 万円超に対する基礎控除額は、従来通り、段階的に 48 万円〜16 万円の間で減額措置が適用されます。
②給与所得控除の引き上げ
給与所得控除について、55 万円の最低保障額が 65 万円に引き上げられました。
③特定親族特別控除の新設
基礎控除の引き上げに伴い、19 歳以上 23 歳未満の親族がいる世帯は、合計所得金額が 58万円以下(年収 123 万円以下)であれば「特定扶養親族」として扶養控除が適用され、合計所得金額 58 万円を超える場合(年収 123 万円超)は特定親族特別控除が適用されることになります。また、特定親族特別控除は、所得が増えるほど控除額は少しずつ減額され、最終的に合計所得金額が 123 万円(年収 188 万円)を超えると適用対象外となります。
3. 近年の主な変更点
近年の年末調整で特に注意すべき変更点を 3 つ挙げます。
- 基礎控除の改正 2020 年から、基礎控除の金額が引き上げられ、所得額に応じて控除額が変動するようになりました。合計所得金額が 2,400 万円を超える場合は、控除額が段階的に減少し、2,500 万円を超えると控除額は 0 円になります。
- 給与所得控除の改正 給与所得控除額は一律で 10 万円引き下げられました。
- 寡婦(かふ)・ひとり親控除の変更「寡婦」と「寡夫」の控除が「寡婦控除」に統合され、さらに「ひとり親控除」が新設されました。これにより、未婚のひとり親も控除の対象になりました。これらの変更は、従業員から提出される申告書の記載にも影響します。正確な計算を行うために、各控除の要件をしっかり確認しましょう。
4. 担当者が間違いやすいポイント
年末調整の担当者が特に注意すべきポイントを 3 つご紹介します。
- 扶養親族の要件確認 配偶者控除や扶養控除の適用には、扶養親族の合計所得金額に制限があります。特に、アルバイトをしている学生やパート勤務の配偶者がいる場合、所得が控除の対象から外れていないか確認が必要です。
- 保険料控除証明書の確認漏れ 生命保険料や地震保険料の控除を受けるためには、保険会社から送付される証明書の添付が必須です。証明書の提出を忘れている従業員がいないか、早めに確認を促しましょう。
- 住所変更の反映 従業員が年内に引っ越しをした場合、住所変更が給与システムに正しく反映されているかを確認しましょう。源泉徴収票に記載する住所が異なると、税務署への提出書類に影響が出る可能性があります。
年末調整は、ただ数字を計算するだけでなく、従業員一人ひとりの状況を正確に把握する作業です。疑問点や不安な点があれば、専門家である税理士に相談することをおすすめします